グリッドマンユニバース BD発売所感+α

というわけで前回記事でも触れた通りBDを……正確には新規ボイスドラマ「倫理観のお話」「グリッドマンユニバース2」、制作ドキュメンタリー、キャストコメンタリー、オーディオコメンタリーを視聴したので、それに絡めてちょっと所感を書いていこうと思います。流石にBDというそこそこ高額商品の内容に関する話なので触れすぎないよう簡素になるかと思いますし、公開当時の感想記事その後散発的に書いたふせったーブレーザー第7話感想ブレーザー第7話感想!?)などで触れられなかった件に関してもちょっと言及したいなあと考えている所存。でも割といろんなところに乱れ書きしちゃったので、「実は書いてるんだけど読み返してないから忘れてた件」とか普通にありそうなんだよな……(

改めて考えてみるとTwitterがいよいよ滅ぶことを全く考慮していなかったので、まともにまとめた形で書いてる話って全然ないんだよな……有志の方々がまとめられてはいたけど、TRIGGER NIGHTで聞いてきた件とか自分でもまとめておけばよかった……。
では、ある意味ネタバレといえばネタバレなので格納です。

触れるの忘れてたり後から気付いたりした件とか。

割と今更感の漂う話が多いので、ご興味ない方は次の節まで飛ばしていただいても構わないかもしれません。おおまかには3つほど。

一つめ。これは映画館で最初に見た時から書こう書こうと思っていたのにその度忘れてしまっていた件で、劇中序盤で裕太と内海が観に行く演劇部の演目が明らかに電光超人第17話「孤独なハッカー」を下敷きにしている意味について。
Twitterがまだ存命だった頃にちょっと書いたこともあるんですが、電光超人グリッドマン第17話って割ととんでもない回で、この1話で・全体の折り返しよりも前の段階で「電光朝人グリッドマンというのはどういう話なのか?」ということを全て表している、SSSS.シリーズで言うならばGRIDMANの9話、DYNAZENONの10話のような話、より一般的(?)な例えをすると夢野久作「ドグラ・マグラ」の作中作のような構造してるんですよね。現在の自分の境遇によって他者に迷惑をかけて憚らなくなってしまった少年と、直人たちの交流と、グリッドマンの使命という、電光超人の要旨を1話に圧縮したとんでもない回なんですよ。直後の18話がガウマの初出回ということに(DYNAZENONによって)なったことで若干影が薄くなっている気もしますが、電光超人の大まかな流れを知った上で初めて管理人がこの回を見た時、それはもう度肝を抜かれました。こんな見事に「このシリーズはこういう物語です!!」と先に提示する手法があるのかと。
この回の、それも本編パートを明らかに意識した芝居を作中作として序盤も序盤に、内海が所蔵しているライブステージのDVD、つまり「円谷プロヒーロー作品」のイコンと対比するように出してくることで、「この話は電光超人グリッドマンから続く『グリッドマンシリーズにしかないもの』と、最新の円谷ヒーロー作品であることの両方をやります」という意思表示になっているし、実際本編でそれを完遂してきた。それは凄まじい表現だな……と、メディアをようやく手に入れたことで改めて認識したという話です。

2つめ。ローグカイゼルグリッドマン登場直前のマッドオリジンについて。
管理人マッドオリジンって厄介度が増したチェレーザ(inウルトラマンR/B)だよなと度々思っているし書いてもきたんですが、その大きな理由ってビッグゴルドバーン登場直前の「グリッドマンのことは全て把握している」という台詞に集約されていて、それを受けて「知られているなら見たこともない手を打てばいい」ということでローグカイゼルが誕生するというのが今作の肝でもあるわけですね。
ただここでどうしても思うのが、「グリッドマンの記憶を本当に(電光超人時代から)全部把握しているなら、グリッドマンのすぐそばに『ダイナ○○○○』ってメカがいる状況で、そいつと合体する可能性をなんで全く考慮してないの?」というちょっと考えられないぐらいでかい見落とし。
だってグリッドマンのことを全部知っているわけではない(Superhuman Samurai Syber Squadとかまだ見れてませんし)程度でしかない管理人ですら、SSSS.GRIDMAN最終回の時からずっとそれを待っていたので……。
まあこれ、もちろん構成的な瑕疵という意味ではなくて、多分マッドオリジンが雨っち監督(あるいはSSSS.製作委員会や円谷プロやら『グリッドマンを主体に金儲けをしようとする人たち』/これ管理人が勝手に悪口言ってるんじゃなくて監督インタビュー等でもう出てる話です、一応念のため!!)を自虐的に下敷きとしているからできる一種のギャグ要素で、「全部知ってるつもりになっているくせに初歩的なことすら知らない」、もっと広く言えば「何かを支配的に扱うことに値しない」存在である、ということを表現してたんじゃないかな……と度々思います。アレクシスを飲み込んでの第2ラウンドがあるにはあるんだけど、ローグカイゼルパワーフィニッシュ直前までめちゃめちゃ押されに押されているのもそういう意味なのかなと。

3つめ。これは正直本編中の意味とか何もない話。
今回の終盤、直接的にアカネさんの影響を受けたアレクシスがプロメアの、アレクシスを通じて間接的に影響を受けたマッドオリジンがゴジラ(モンスターバース)の要素を突然出してくるあたりで「劇中時間が2019年6月である」ことを表現していて、その表現方法の迂遠さが管理人あまりにも好きだったりするのですが。
2019年のこの時期、内海もアカネさんもまだ見ていなくて、年末に見ることになるであろう、ある爆弾があるんだよな……ということについ最近気づいて。
新規怪獣があの時点ではだいぶ多かったウルトラマンタイガ?それも良い点ですが違います。
あの世界観だとなんの新作が発表されたのかが気になる、初開催となる円谷コンベンション?いいえ違います。
それはもちろん、ゴジラKOMというとんでもない爆弾を投下され、もう今年のゴジラはお腹いっぱいだなあとほとんどの特撮ファンが思っていた2019年末、突然予告なく追加のゴジラを投下してきた、

劇場版新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-Xです。

奇しくもシンカリオン、「タカラトミー資本である」「エヴァの影響がでかい」「(TVシリーズのエピソードですが)制作中に背景に使う場面写が足りなくなった結果プロデューサー自身がヘリに乗って撮影してくる」「TOHOアニメーション配給だからゴジラ出していいでしょ!!と言い張ってゴジラを出してくる」と、グリッドマンユニバース(あるいはSSSS.シリーズ)と奇妙な類似点があるんですけど、タイミング的にまだギリギリTV放送中・映画館でいきなりゴジラファンの度肝を抜いた劇場版の公開は半年先なんだな……というのがなんか妙に面白い巡り合わせに感じまして……。
まあツブコンの内容と同じく、我々の知ってるシンカリオンがツツジ台で放送されてるかどうかはちょっと怪しいんですけど、ぜひやってて欲しいな……という思いがかなりある。
あとシンカリオンZの放送が始まったらアブトの声で内海がめちゃめちゃ混乱して欲しいとも思う(それ言ったら出水司令長の時点でもうダメなんですが)

小ネタだったり関係あるのかないのかよくわからん話は以上で、ここから先がBDを受けての内容です。

ボイスドラマ2本

「アクセプターは鳴らない」は配布当時に聞いているので今回は飛ばしです。通しで見ると体力持っていかれるから腰を据えて見(聞き)たいぜ……。

「倫理観のお話」

六花と暦くんとグリッドナイト同盟ってどんな組み合わせなんや……と思っていたらあれよあれよという間に自然と「この人たちじゃないと成立しない話」を見せられてるの、絶滅ホストばりになんか騙されているんじゃないかと思わされる構成手腕でちょっと慄く。
暦くんを気に入っちゃってる六花ママとかずいぶん久々な気がするリサイクルショップの娘さんやってる六花とかハッピーコスモジウムとか(こんなもんで殴られたらそりゃ記憶も蘇るわ!!)色々あるんですが、管理人の目が行ったのはグリッドナイト同盟およびフィクサービームの扱いについて。
これSSSS.の頃から(というか正確には電光超人時代から)そうなんですけど、フィクサービームって便利すぎてどうすんのさという問題があるんですよね。電光超人時代に設定などを構築した赤松さんによると、人体の負傷とかコンピューターワールド外の破損とかも普通に治せて/直せてしまうらしいのですが、そうなってくると、「破壊」あるいは「死」という事象に対して、フィクサービームを使える存在の責任が際限なく増大してしまうわけで。その視点において「フィクサービームはこの世の理を外れた存在=怪獣の被害にしか使えない」という線引きは正直納得。「地球は我々人類自らの力で守らなくてはならない」のグリッドマンシリーズ的な表現というか。
(ちなみに上で触れた電光超人第17話「孤独なハッカー」では、完全な怪獣由来ではない少年の負傷/正確にはその負傷にともなう心的外傷/に対してグリッドマンがフィクサービームを使っているので、2代目の言う線引きはあの後作られたか、そもそもグリッドナイト同盟での取り決めであってグリッドマンには適用されないのかの可能性が高いようにも見える)

その上で「グリッドナイト同盟が起こした被害も怪獣が起こした被害に入るので当然使ってOKです」がかなり無法で大好きなんだよな。 オチが2代目=アノシラスちゃんのあの笑い方で締めなの、ツボが割れたけどフィクサービームが使えない→マクスウェルで直せるかどうかのテストを兼ね、成功すればよし・失敗したら自分が直して良いことになる(これはそもそもマクスウェル砲が本当に説明通りのものであるという前提ですが/もしかすると最初から破壊光線として作ってるかもしれないからさ……)という論理展開も含めた強者感の発露にも見え、めちゃめちゃ「あの子」らしいように感じます。仮にも知人のお嬢さんの家を8割崩壊させておきながらビジネスパートナーと2人して感慨に浸っていたりその後すぐに直していたりするあたりとか、『この世界の生まれだけどこの世界にはあまり干渉するべきではない』という立場になりながらそこまで悲観してない振る舞いとか、なんかこう……裕六の進展とは別の意味で、予想以上に『グリッドマンユニバースの後』の話を見せてもらってしまったなという印象がとても強い。
「怪獣のいない世界の方がきっと正しい」という、ある意味グリッドマンシリーズ全体を貫く台詞を差し込んできた怪獣のお嬢さんと相棒、そしてその知人2人の話として、予想を遥かに飛び越えた内容でした。びっくりする人選だったけど、これ以外がないセレクトでもあったな……と感じます。

「グリッドマンユニバース2」

近日の評判から正直Amazonではあまり買いたくなかった(これはグリユニに限らずあらゆるものを)んですがボイスドラマがここでしか付かないとなると……選択肢がなくて……。無事に届いて本当に良かった……。

愚痴はともかく内容。こちらはなんとなく素直に「アクセプターは鳴らない」の率直な続きという印象が強い。裕六の甘さとかよもゆめの甘ったるさとかこの空間にいる内海かなり余裕あるな……とか思ったんですが、もしかして「裕太が分裂する」って内容、とりあえずユニバース(WEBラジオ)で監督がゲスト出演した時に言ってた内容そのまんま……なのでは……!?というのが主に思った部分。続編でやるってそういう意味!?
魂から声出てる内海(何とは言わないし人によって同意できる作品は違うだろうけど、まあ……うん……あるよね……/でも1番ツボなのは「電光超人グリッドマン30周年記念作品」のおまけで言ってるところなんだよねこれ……)とか「これもう南夢芽さんじゃなくて若山詩音さんになってない?」みたいなゲラい夢芽さんとか明らかにその時間では話が聞けないはずの蓬の解説とかグリッドマンと六花両方に「前の人」の雰囲気を醸し出されて大変なことになる裕太あたりがツボ……ということを前置きに。

「日曜日にやってたウルトラマン」の件が1番気になってたところなんですが、試聴した段階ではまさか完全にスルーされるとは思わなくってですね
とりあえず 発売前聞いた後 にそれぞれこんな予想を立て、ところで内海お前はお前でその頃って日曜朝に更新されるウルトラマンの新作見てない?と言いたくなったりしてたところ。

この記事を書いてる当日・日曜日の朝、
・長谷川圭一先生が脚本を担当して
・SSSS.GRIDMANと同期のウルトラマンR/Bにて美剣さんを演じた木下彩音さんが出演し
・主人公が(特殊形態とはいえ)巨大ヒーローに変身して巨大怪獣と戦い
・エネルギーが消耗すると胸部の発光体が点滅し
・ついでに高校生がメインキャラである

番組(の1エピソード)が爆誕してしまい
こんなところで解答を出すなよ!!!!!!!!!!!!!!!!!」と管理人は大声で叫んだと言います。巨大化するのはいいけど(いいのか?)天に向かって右手を掲げたポーズで巨大化したらもう言い訳が効かないだろ。管理人、GRIDMANとR/Bの印象(より正確にいうと六花とアカネさんの関係とアサヒと美剣さんの関係)がかなり分かち難く結びついているので、木下さんがゲスト出演されているという点でも異様な共通項を見出してしまいました。どうしてこんなミラクルを起こしたんだこの人たち。
まあ問題はよもゆめが見た放送は2021年のはずなのでこれが正答であるわけがないというところなのですが……。いやマジでなんなんだろうなこれ。2021年後半ってちょうどギャラクシーファイトもなかった時期なので見当がつかない。曜日を間違えてただけでウルトラマントリガーだったというあたりが願望込みで第一希望です。管理人トリガーの最終回でアキトがケンゴに怒る場面が「蓬がやりたかっただろうにできなかったこと」に見えて泣けちゃったので本当に見て欲しいんだよな……なんの話だっけこれ

で、トリガー(≠TRIGGER)の話になったのでちょっと変な順番ですが次は

キャスト・スタッフオーディオコメンタリー

これブックレットに並んでBDの1番の肝かなと思い、割と衝撃的な話もあるんですが、言及は控えめにしたいと思いつつマジで書きたいところだけ行きたいんですが。まずキャストコメンタリーの方で、

DYNAZENON SHOWの時に濱野さんが突然言われた「アクセスコード・ダイナレックス!」が当時は完全アドリブだった(レックスとしての出演は濱野さん自身この時点ではまだ知らされていなかった)、ということまではまだいいとして。
もう一つの案として突っ込もうとしていたのが「ウルトラマントリガーの変身口上(どれとは言われていませんが、おそらく「未来を築く、希望の光!」「宇宙を照らす、超古代の光!」のどっちか)」だった、という点で度肝を抜かれました。それどっちもガウマに当てはまるけどアクセスコード以上に我々現地で固まっちまうよ。多分単純に「トリガー」だから、という話なんでしょうが、SHOWの時点ではケンゴが最終回で一時的にいなくなること言われてないので、それはそれで麻生さんに「なんでケンゴがガウマとだいたい同じ顛末になること知ってるんですか!?」と言われていた可能性が高い気がするよ……。
キャストコメンタリー、緑川さん・広瀬くん・稲田さんが日頃のノリである一方、濱野さんがガチガチに詳しいファン(なんの説明もなくシグマの話を始められたりする)として・安済さんがこの濃いメンツに負けずにDYNAZENON組の話をされていてかなり強烈な内容でした。不思議な組み合わせでしたけど良かったな……。

一方のスタッフコメンタリーもなかなかとんでもないんですが、こちらも大きくは1点だけ挙げると「GRIDMANとDYNAZENONの本編振り返りの演出は撮影処理ではなくてマジのブラウン管(テレビデオ)で流した映像をiPhoneで撮影した映像」という情報で度肝を抜かれました。確かに「記憶的な古ぼけた映像」「撮影の皆さんにお願いするのも難しそうな表現」という意味では最強に近い表現方法で、撮影時に部屋を暗くしないと画面に反射するとか一度として全く同じ映像が撮れない(ブラウン管のチラつきは常に一定ではないため)とかすごく印象的なエピソードなんですが、これ何が面白いって、アニメの表現方法の一環でありながら「実際にあるものでなんとかする」という点でまさしく特撮的なアプローチなんですよね。「アニメーションで特撮的表現をする」「原典への敬意や表現的必然性から実写パートを入れる」といった方向で特撮らしさを見せ続けてくれた雨宮グリッドマンシリーズが、撮影手法という点でも(特にそうしようという意識がなかったはずなのに)特撮的な手法を一部取り入れられていた……というのはかなり面白い点だと感じます。

あと各作画の皆さんに関するコメントが素晴らしいので(主に印象に残ったのは千葉さん・土肥さん・菅野さんの若手組。土肥さんのサウンドラス、千葉さんのブランコシーン、そして菅野さんのクライマックスでのUniverse Fighterの一撃は管理人も本当に素晴らしいと思いました)他の話も含め、買って聞いてね!!

制作ドキュメンタリー

めっっっっっっっっっっちゃ良かった……。分量的には30分ぐらいなんだけど超良かった……。
発売前特番でもちょっと見せられていた「そして伝説へ……」な総集編キービジュ素材撮影、アカネさん新デザイン制作工程ももちろんなんですが、電光超人ロケーション探訪兼ユニバースロケハン(稲城で楽しそうなロケハンチームの皆さん)と実写パートを見学するTRIGGERチームの楽しそうさが本当に良くて……。
個人的にはどうしても知った顔・知ってる名前を追ってしまうので雨宮監督にずっと付きながら(おそらく撮影中の一種のフォローをしながら)映像中では特に一言も発されず、TRIGGERアニメのファンの皆さんからは「この人どなた!?」と思われてるんじゃないかという渋谷Pとか、(おそらく)カメラの外から声をかけているので姿が見えないのに声だけ一言飛んでくる麻生Pとかが妙にツボでした。今年もうお二人の名前をおそらくエンドロールだけで60回近く見ている(デッカー最終2話で2×2回、劇場版デッカーで6回、グリッドマン関連映画で22回、ブレーザーで16×2回)のでなんか変なツボができている気がする。
実写パートって円谷のウルトラ撮影チーム(こう一括りにできるチームがあるのか?というと違うのかもしれませんが)ではなく、どうやら関連はあるけど別の会社であるBOLDTYPEの皆さんにお願いしたそうなのですが、藤岡さんをはじめとするスタッフの皆さんがこちらはこちらでプロフェッショナルだな……と感じられる映像でもあり、とかく見れて良かった内容でした。収録決めてくださった方々本当にありがとうございます。

ブックレット

これもまあそこそこ重要な情報なので、要点を書くに留めておきたい。
まず最初に、これは今回のブックレットに限らずこれまでのインタビューでも言われていた部分なんですが、ユニバースの内容を踏まえて、雨宮監督が「本当はやりたくなかった」という要素が、物語上不可欠なレベルで重要なポイント(新条アカネというキャラクターの再登場、蓬のドミネーション、グリッドマンの弱音、インナースペースの裕太)にあれだけあってなお、ちゃんとどれもこれもが熱い/感動できる/良いシーンになっている、という部分がかなり衝撃的に感じます。
極端に悪い言い方をすると、これらって要するに「監督自身は良いと/必要と思っていないけど観客が喜ぶからやっている」という媚びの要素なはずなんですよ。そういう場合って大体なんらか、その「いらなさ」の心理が観客に伝わりそうなものなのに、これだけ重要な点が「そう」であっても全部がバッキバキに良い演出・良い展開になっていて観客は圧倒されてしまう。
これ、「積極的にやりたくはないけどやると決めたからにはとことんやりきる」という、ファン以上に仕事人である監督の姿勢と、それを監督とは違う立場・見たいと思った各セクションスタッフの熱量がちゃんと噛み合ったからなのかなあと少し感じます。他の作品でこんなことって起きえるんだろうか。実は気づいていないだけで他にもたくさんあったりするのかな……。
この件含め、グリッドマンワールドの現地コメントや今回のブックレットにある通り、雨宮監督は「グリッドマン」をプロの制作者として復活させてくださったが故に、そのグリッドマンをご自身が単純に楽しむことから遠ざかってしまったという面もあるので、監督が言われている通り「雨宮哲以外が制作したグリッドマン」も色んな意味で必要な気が以前にも増してしています。
そのためにまずは円谷が複数ラインで実写特撮を動かせるぐらいウルトラシリーズを現状よりさらに安定させなくてはいけないので、我々の責任がめちゃめちゃ重いんだよな……。ブレーザーのアイテムもうちょっと買った方がいいのかな……。

あとこれは今回に限ったことではなく、またどなたか個人のインタビュー内容でもないのですが、改めて思ったことを一つ。
ラストパートのコンテを描いた中村さんが「裕太と六花の告白の成立までがめちゃめちゃ難しかった」と言われている直後のページ、メカニックシークエンスディレクターの浅野さんのインタビューで「玩具の設計が完璧なので玩具でもできることしかしてないんです」って書かれているのを読んだ時に、失礼ながら爆笑してしまって。
高校生のカップルが成立するかどうか?という、淡くて青い繊細な表現と、ヒーローとロボットと怪獣、それも玩具が出てくるタイプのものがガッチガチに絡み合った、玩具販促的なパワフル極まりない演出、両方が不可欠な要素として出てくるアニメでしかこんなページ構成になることはあり得ないわけで、多分その二つをここまでの深度でやっているのはこの作品ぐらいなんじゃないかな……と思わされる、強烈なギャップのある構成でした。
そしてこのアニメってやっぱちょっと変だな……とも改めて思った。

グラフィニカさんメイキング

最後に、これはBDの内容からは外れるんですが、本作3DCG・および撮影を担当されたグラフィニカさんの公式Twitterアカウントで、CGカット撮影メイキング紹介がBD発売記念企画として公開されていました(リンク先ツイートだけでなく前後にかなりの数があります/これどこかでもうまとめて発売してくれないかとすら思う
グラフィニカさんによるメイキングってTVシリーズの時は毎週行われていてすごく楽しみにしていたんですが、今回は映画作品ということもあって難しかろうなあ……と思っていただけに、「メディア発売前に記念企画として行います!!」という今回の企画は嬉しかったですし、今回はCGだけでなく撮影処理という普通にアニメを見ているだけだとどういった内容なのかが把握しづらい処理に関しても丁寧に知ることのできる内容になっていて、さらにパワーアップしてるな……と感じました。
これかなり個人的な話なのですが、ユニバースおよびDYNAZENONで撮影監督、GRIDMAN時代は撮影監督補佐だった志良堂さんがGRIDMANのBDブックレットで言われていた「グラフィニカはCGチームと撮影チームがあるけどあまり社内でお互いの仕事を見ることが多くなくて、今回同じ作品に関わったことでCGチームの仕事の良さを知ることができて嬉しかった」というコメントがすごく印象的だったんですよね。今回、視聴者にも「CGチームはなんとなくわかるけど撮影処理って具体的にはどういうことをされているのか?」が、ものすごく細かい調整の部分(主に本編パート)から、撮影処理がないとこんなに印象が違うの!?と感じるダイナミックな部分(主に特撮パート)まで見ることができて、この時の志良堂さんの感動を、少しぐらいは追体験することができたのかな……と勝手ながら思いました。ブックレットインタビューによるとお子さんも生まれたそうで、今後の活躍をますますご期待しています!

総括

……ところでここまでベタ褒めなんですが、最後に一つだけ言ってもいいでしょうか。

応援上映前説映像、なんで収録されてないの?

安済さん演じるちせのめちゃめちゃ元気な口上、本編では残念ながらカットされてしまったHuman Love CHHF 2023(アカネさん変身テーマ)のイントロをがっつり流した映像、そして何より「ゴルドバーンもそうだそうだと言っています」のインパクトと、あれをいつでも見られることをものすごく楽しみにしていたので、他の特典が豪華も豪華なだけにこの1点がどうにも気になります。収録できるタイミングが他にあるともしばらくは思いにくいしなあ……。

この1点、本当にこの1点だけがかなり大きな不満点で(さらに小さな不満点を言うと、ヘッドホン用音響であるdts-HD HPXのモード切り替え時の音声が、グリッドマン同盟とガウマ隊の掛け合いであってほしかったなあ……という部分もあるんですが、これはマジで高望み)そのほかはかなり満足度が高かっただけに、これは後々なんとか回収して欲しいというのが本音です。絶対また見たい……。

BDというメディアが発売されて、この後12月に超全集はある(そしてそこにはかなりの爆弾が収録されるであろうことも公表されている)とはいえ、流石にある程度一区切りがついたかなという、今年1月から継続していたグリッドマンユニバース関連展開。
キャスト・オーディオコメンタリーで映像を見ていて改めて思ったんですが、誤解を恐れずに言うと私このBDをあんまり家の環境で見たくないんですよ。もちろん手元に置いておけるのは嬉しいんです。嬉しいんですけど、細部を時々止めながら見るという見方をするならともかく、このとてつもない作品を一気に見るなら、できる限りの大画面、大音響、つまり映画館で見たい。20回程度とはいえ、自分に可能なだけ映画館に行っていたのはそうなるだろうという予感があったからでもあります。
もっと言うと、GRIDMAN・DYNAZENONの各総集編に続けてのユニバースという、およそ6時間ぶっ続けの上映形式を見たい。噂によると台湾かどこかでは実際そんな上映をされたそうですね。
それが実現するかはともかくとして、そういう希望もあるということを表に出しつつ、来月、ツブコンで開催されるグリッドマンステージへの期待も込めて今回の記事は締めさせていただきます。

……ところでそろそろMODEROIDのフルパワーグリッドマンも、そして別所の原稿も手を付けないとまずいぞ?